炎上プロジェクトよさようなら


緊急提言:炎上プロジェクトよさようなら~責任なき業務委託(丸投げ)は組織崩壊への一里塚

 

外部委託の仕事がどのような経過をたどって責任放棄の”丸投げ”になっていき、ついには組織全体を崩壊させてくのかを示しましょう。 

Step 仕事が忙しくて間に合わない。 

Step 外部の業者から人を派遣してもらい、仕事を手伝ってもらう。このときはまだ仕事の責任は自分にあると思っている。派遣者のミスが自分の指示の悪さに有ったとしたら、自分が責任を負うのは当然だと思っている。 

Step 派遣者で穴埋めしてきたが、仕事の忙しさが限度を越えてきたため、業務のまとまった部分を外部の業者に委託するようになる。最初のうちは委託した業務についての進行状況、品質、問題点について委託先と綿密にコミュニケーションを取っており、余り問題は発生しなかった。 

Step4 ◎さらに忙しさが増し複数の仕事を抱えざるを得ない状況になってきた。もう委託先の仕事の状況を見る余裕すらなくなってきた。委託業務の細かい指示もできなくなり、自分の専門領域の技術を学習する時間も無くなり、自分の主な仕事は多数の外注に仕事を割り振ることだけになってきた。 

◎同時に、コストカットの圧力が厳しくなり急速にオフショア発注を拡大せざるを得なくなり、ノウハウを保有していた国内外注を切らざるを得ないことになった。

 オフショア先に対しては明確な仕様書・設計書の提供も不十分な上、言葉の違いから十分なコミュニケーションができない状況を招いてしまった。 

Step5 外注から納入される成果物に多くの欠陥が発生するようになった。 

Step6 多数の欠陥品に対して自分では到底その責任を負い切れないので、委託先外注に対してその非を責め続け製品責任の転嫁をせざるを得ないようになってしまった。 

Step7 step4~step6の悪循環がくりかえされると同時に、学習不足の結果は自分の専門的なスキルを劣化させ、外注へまともな指示すら出せなくなってしまった。 

Step8 回復不可能な大障害が発生してしまった。 

 

この悪魔のサイクルはstep3で止めるべきでした。悪魔のサイクルを止める役割・責任は発注元の管理者にあり、単なる負荷の分散だけではこの問題は解決できないでしょう。仕事のプロセスの見直しや仕事のやり方の見直しも必要となります。更に業務力の強化も必要で、多くのムリ・ムダの排除のための組織的な改善活動も必要となります。 

 

責任を放棄した業務委託を日常的に見かけないでしょうか。もしかして自分もそうしてはいないでしょうか。「業務委託が責任放棄にいたる悪魔のステップ」のstep1からstep8までを示しましたがこのステップにはまだ続きがあります。

 

Step9 障害対応に時間をとられ本業の仕事はどんどん遅延し、品質も急速に落ちてくる。step4への逆戻りです。このような状況は突然くるわけではなく、数年間をかけて徐々に進行していくのです。その間に担当技術者のスキルは確実に落ちていき、5年もたてば彼らは間違いなく専門家あるいは開発者とは呼べないレベルの人材、すなわち開発者の調達担当者化がおこることになります。人材の劣化です。さらに業務委託先として中国などのオフショアが大きな規模で進んだ場合は、この地獄のサイクルはさらに加速度的に進行するでしょう。 

Step10 最初は単一のプロジェクトや個人レベルで始まった品質の低下・人材の劣化が組織内に拡大し、ついにはほとんどの組織が恒常的に品質・資金・人材問題を抱え、業務能力を失った集団となってしまいます。人および組織の崩壊の姿を目の当たりにすることになります。 

 

◎対策≪やればできる≫ 

1.コストカット第一主義をやめ、プロフィットドライブにより開発組織を資金力的に強化すること。 

2.無定見なオフショア発注をやめ、自組織の実力の範囲を見極めたオフショア開発にとどめること。 

3.ノウハウを保有しているコアな国内外注を切らないこと。 

4.同じ失敗を繰り返さないこと、および無駄・リスクの排除・ノウハウ継承のために組織的な改善活動を実行すること。 

5.組織の老齢化を防ぐために組織構成員の平均年齢を35歳程度に保つこと。 

6.外注への丸投げを行わないこと。 

 

責任なき業務委託すなわち業務の丸投げは開発者たちを無能力化し組織を崩壊させます。もし異論があるならば、丸投げに専念している個人ないしは組織を観察して見るべきでしょう。認められないと言うならば、コストカット第一主義に徹して積極的に丸投げを国内あるいはオフショア先に対して実行してみるとよいでしょう。責任の委託はできないし、やってもいけないと言うことが炎上プロジェクト・人材の劣化・顧客からの賠償請求という高い代償を払って実感できることでしょう。

 


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プロジェクト炎上の原因と対策
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